あと少し
網戸から夜風が滑り込んできて
やけに火照った身体を冷やしていく
やらなきゃいけないことがあるとか
こんなことをしている場合ではないとか
繰り返したまま
今日も早い時間に
身体を丸めて眠り込もうとする
もうすぐ私がいなくなることを
言わなければならない
一人で誰も知らない人の中を
さ迷い続ける
あと一歩のところで
たぶん、そうなのだろう
髪を切ろう、と
鏡を覗いて思う
梅雨の湿気でじっとりした顔が
醜くて見ていられない
あの人に見つめられていたことが
途端に恥ずかしくなる
七月
浮き立つ街並みが嬉しい
陽に当たりながら
何度も人とすれ違う
ある程度の距離を保って誰かと接する時
過剰なくらい陽気になってしまって
笑いが失われていく余白を
うつむきながら昇華していく
抱き締め合う度に
突き刺さる棘
痛みを我慢して身体を寄せ合えば
赤く滲んだ肌にも馴染んで
やがて
心地良いものになる
息を詰めて
一つ一つ
戻れない場所が増えていくのを思う
しきりに渇く喉を潤すのに
流し込む冷たい清涼飲料水
しびれた舌の上を通り過ぎていく甘味
もう考えたくないのに
あと一週間
そうすれば私も、たぶんあの人も
少しは落ち着くかもしれない
秘密に視線を合わせては
二人で落ち合って
誰にも言わないことを打ち明けている
そんな関係に怯えながら
私も喋ってしまう
楽しそうな横顔を見ながら
この人に悲しみが刻まれたら、と
考えている
2010年7月3日