雪ふる日
開いた本の頁から
羽虫が飛び出してきた
それはふわふわと上っていき
天井のそばを漂っていたが
いつの間にか消えていた
窓の外は雪が降っていた
雪は
灰色の町の上で
まだら模様を描いていた
私は一冊の本が
まだ読み終わらない
マグカップの下では
冷たい紅茶色の輪っかが
机にこびりついている
待ち続けることができると
思っていた
一冊の本すら
満足に読むことができない私は
やがてくる
おしまいの合図を
最後の頁に押し込んで
きっとそのまま
本棚に仕舞ってしまう
窓の外は雪が降っていた
雪は
紺色の空の下で
しんしんと
あのひとの足跡の上に
降り積もっていた
2021年1月24日