薄暮
日に褪せた畳の上を
夕陽が
時間をかけて這っていく
蛇口を閉めた後にちろちろと流れる
ホースの底に溜まった水のように
染みていく夕焼け
昼と夜の境い目に
部屋はひそかに歳をとる
二人で書いたシナリオは天井に届きそう
現実が欲しいあなたと
誰にもなれなかったわたしのために
こしらえた部屋
雲がゆっくりと動く
オレンジ色の影が落ちる
隙間なく流れ込んで
わたしの身体を組み敷いている
やさしいちから
今日もわたしは
誰にもなれないな
子どもの頃
充分におままごとをしてこなかった
わたし達の
かさねたフィクションの重みに
この老いた部屋は
いつまで耐えきれるかしら
2021年8月28日