線を引く
眠りの中で
たった一枚のイメージを探している
わたしのものではない呼吸が
さえざえと
瞳の芯を揺り起こす夜明け
白く泡立つ波は
反復する動きを止めない
ぴんと伸ばした脚の先から
潮が満ち
なだめるように
這い上がる手のひらがある
ひとりとひとりがいることと
ふたりがひとつになることと
境界線の手前で
よせてはかえして
語り合っているつもりで
ほんとうはわたし
何も考えてなんかいない
静かに立ち去る気配がある
目を開けると
朝はもう
ひとつの顔で佇んでいた
2021年9月29日
「詩と散文のフリーペーパー ひとかけの朝」1枚目に掲載