海岸線にて
長い坂道を抜けて
道路が
海岸に向かってふくらんでいく
八月下旬の空を溶かした
海は
しずかに砂浜に打ち寄せて
誰かの時をきざんでいる
浜辺へ降りる石階段に
脱ぎ捨てられた二足のサンダル
若いふたりは冷たい水に足をひたして
手を繋いで歩く
転びそうになった彼女を
男の子が後ろから抱き締め
ふたりは身体を揺らして笑っている
白い太陽の見下ろすさき
潮風があたり
光がひとつぶひとつぶに散らばって
きらきらと
かがやいている
夏の終わりの海のうえ
2021年11月7日
「詩と散文のフリーペーパー ひとかけの朝」2枚目に掲載