雪片

春でも夏でも雪は降る
しんしんと
それは何も降らないときよりも
しずか
手のひらに
飲みかけの缶ビールに
芝生に
あなたの髪に
降りつもる
目を細めるその瞬間に
わたしだけに見える

すべてを覆うまでに
時間はかからない
そう思うとき
わたしもあなたも吸収されている
動作のひとつひとつを音に分解して
きれいに抽斗に納めるように
どうかこのまま降りつづきますようにと
祈りにも似た気持ちで
あなたと手を繋いだ

埋もれたままのわたし
いつまでもやさしかったあなたは
もう意味がなくても
傘を差してくれた
それでも
嘘だよとは
言ってくれなかった

見上げた白い空から
落ちてくるもの
対象をうしなった空に
映るものは何もなくても
わたしの視線は上を向く
また降る雪を待ちわびている


2021年11月21日



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